現代文読解の要諦

 現代文科目は、その実力について、明確に示すことのできる人は少ない。巷では、運、であると言う人は多い。しかし、そんなことは決してない。ただ、他の教科・科目と明確に違う点が一つある。それは、論理力、である。言い換えれば、物事への考え方、とも言えるだろう。

目次

現代文に係る能力

 現代文に係る能力は大きく2つ存在すると考えている。一つが、読解に係る能力である。現代文科目に必要な特有の能力である。もう一つが、解答に係る能力である。試験を解く以上、解答をするための試験に必要な特有の能力。科目特有の能力と試験特有の能力、両面から考えることで、必要となる能力について解説していく。

読解に係る能力

 現代文科目において、必要とされる能力は以下のとおり。

  • 客観的思考力
  • 論理的読解力
  • 表現・記述力

客観的思考力

 客観的思考力とは、客体(対象物)を主観から切り離して考える能力のことである。現代文科目においては、様々な領域の高度な文章を読まなければいけない。その場合、自分自身の知識や経験を基に類推などを用いて読むと、やや理解しやすくなったと感じるものである。ただし、そこには、自身の知識や経験が主観となり、その理解は文章から乖離する。この隙間が、解答根拠を曖昧にするのである。
 現代文科目は、書かれている内容を書かれているままに理解することを前提にするものである。次の文章を読んで後の問に答えよ、で始まる現代文科目は、解答の根拠を文章に依拠することを、解答の前提条件として課しているのである。

論理的読解力

 論理的読解力とは、客体の関係性を抑えながら文章を読む能力のことである。現代文では客体の関係性を正確に掴むことで、本文の正確な理解をすることが可能となる。基本的には、同じか、違うか、の2点に絞られ、同じもので時系列的な変化を伴うものを因果関係と考える。この2+1の重点項目を、文章の中でいかに読み解いていくかが重要となる。
 さらに、下位概念として、情報階層、というを提案する。同じものを考える場合に、抽象・具体の関係性を見抜くことが重要である。これらは、イコール関係であるから、それらを違うものと認識してはならないし、同じ大きなブロックのように括らなければならない。
 例えば、以下の文章を検討しよう。

情報伝達方法の即時性に注目すると、同期的コミュニケーションと非同期的コミュニケーションに分けられる。同期的コミュニケーションとは、リアルタイムで行われるコミュニケーションのことである。会話や電話が相当する。すぐに反応が必要な場合に用いられる方法である。一方で、非同期的コミュニケーションとは、リアルタイムで行われないコミュニケーションである。メールやLINEが相当する。すぐに反応が必要でない場合に用いられる方法である。そのため、私たちは、反応に必要な時間に合わせてコミュニケーションの方法を選択しなければならない。

構造分析を行うと、以下の通りになる。

  • コミュニケーションの2タイプ
    • 同期的なコミュニケーション
      • リアルタイムで行われるコミュニケーション
        • 会話や電話
      • すぐに反応が必要な場合に用いる
    • 非同期的なコミュニケーション
      • リアルタイムで行われるコミュニケーション
        • メールやLINE
      • すぐに反応が必要でない場合に用いる
  • そのため、反応に必要な時間に応じて、コミュニケーションを選択する必要がある。

表現・記述力

二点目は、採点基準より逆算する、ということである。これは、採点基準に沿って回答する、ということである。試験というのは、解く(採点)するために作られているのだから、そこには必ず採点の基準が存在する。採点基準を意識した学習を積み・回答をすることで、得点を伸ばすことが可能である。また、この基本姿勢は、他の教科でも同様に当てはまるものである。例えば、数学においては回答指針を示すことによって同じ計算ミスでも得点が変わることがあったり、英語において文法知識の確認が不明と理由で「意訳」による減点・不正解、がこれにあたる。

解答に係る能力

解答根拠

採点基準

構造分析

 どの文章にも、文章構造は存在する。文章構造とは問題文中における文と文の関係性のことである。主に矢印を用いて構造化することによって認識することができる。受験生における学力伸長の目安としては、夏までに構造化を完璧にできるようにする、秋からは構造化を思い浮かぶようにする、というように、秋までに実戦で使えるようにすることが望ましいとされる読解技術である。

類比

対比

対照的な事柄を比較的に表現すること

因果

原因と結果の関係性を表現すること

解答指針

要求

傍線の引かれるタイプの問題は次の2パターンに分けることができる。傍線の引かれないタイプの問題は文章全体に係る正誤問題や要約問題である。

どういうことか

 イイカエの求められる問題である。前後関係より傍線部と同じ内容を答える。ポイントとしては文中内における同一トピックをブロック的に把握することである。

なぜか

 因果関係を求められる問題である。傍線部を結論として原因を答える。ポイントとしては、時系列を考える分かりやすい。原因と結果という手前、時系列に前後関係が生じるからである。

解釈

設問をブロックに分けて解釈する必要がある。そうすることで何を問われいるかが分かりやすくなる。

学習方法

 本当に初心者なのであれば、本文を隅々まで漏れなく読む、ことが非常に重要である。無意識的に読み飛ばしていることは普通にある。確認方法としては、解答を見たときに書いてあったと認識できるか、である。そんなこと書いてあった?、となるのならば、それは読み飛ばしている。
 最初に行うのが、全文の書き写し、である。あの長い文章を一言一句書き写すのである。そうすることで、読み飛ばし、は無くなる。この方法は私が実際に行った方法で、予備校の講師も受験生時代に行ったことがあるようで、現代文に危機感を抱きながら真剣に現代文を向き合った者が辿り着く境地なのかもしれない。ただし、ネタとして話されることはあっても、真剣に薦められることはない印象。とはいえ、私はこの方法で現代文の成績を上げた。

 次に重要なのが、問題文の構造化、である。その文章に何が書いてあるのかを文と文の関係性を抑えなければ、把握することは不可能である。そのため、全ての文章を構造化するのである。どこに何が書いてあるのか、を確実に把握することができる。また、難関大志望者向けの授業では、多くの場合この方法が採用されている印象。また、私が塾講師のバイトをしていた際、国語の授業でこの方法を採用したところ、注意を受けたので、一般的ではないのかもしれない。

 そして並行して行うのが、単語の検索、である。現代文でも単語帳や現代文常識なる参考書の類は存在するが、そこまで重要視する必要はない。なぜなら、漢字は個々に意味を持っているため類推がしやすく、回答根拠は本文中に用意されているからである。しかし、単語に関しては本文中での類推が困難な場合があるので、復習の時にでも電子辞書やwebで検索しておくと良い。ただし、修飾語や前後関係等からの類推は忘れてはならない。

さいごに

 ここまで読んでくれた諸君らは、論理的手続、による解法が存在することを理解していただけただろう。そして、現代文で要求される力は、あらゆる物事の論理関係を理解することにも役に立つし、様々な状況で有用である。入試だけと割り切らずに、自身の能力を高める、という意味で学習に臨むと良いだろう。

目次