2021年度 共通テスト 本試験 「国語 現代文」 解説

 はじめに現代文の基本姿勢として2点のポイントを紹介しよう。
 一点目は、客観的に読む、ということである。これは、あなたの意見や主張は聞いていない、ということであり、同時に出発点でもある。文章を読んで次の問に答えよ、というような文言で始まる現代文科目においては、回答、その全ての根拠を本文中より抽出しなければいけない。また巷で聞く、現代文を実力ではなく運、とする主張は、筆者と回答者の間にある主張の距離によるものである。これが近ければ点数は上がり、遠ければ点数は下がる。そういう意味で、学習を放棄した者にとっては運によって点数の上下する対象として映るのかもしれない。
 二点目は、採点基準より逆算する、ということである。これは、採点基準に沿って回答する、ということである。試験というのは、解く(採点)するために作られているのだから、そこには必ず採点の基準が存在する。採点基準を意識した学習を積み・回答をすることで、得点を伸ばすことが可能である。また、この基本姿勢は、他の教科でも同様に当てはまるものである。例えば、数学においては回答指針を示すことによって同じ計算ミスでも得点が変わることがあったり、英語において文法知識の確認が不明と理由で「意訳」による減点・不正解、がこれにあたる。

目次

第1問

 評論テーマの現代文。評論文の特徴としては、基本的に筆者に何らかの主張があり、その主張を読者に伝えるために例示や比較などが用いられる。さらに、文章ならではの表現、独自の意味解釈、などが用いられることが多く、文章内で意味を推察しながら読み進めていくことが求められる。そのため、テーマ演習などが役に立たないとは言えないが、個別具体的な目の前の文章から離れた知識によって解答することで、自らを誤答へ導くことを心に留めておくことが重要である。

 テーマとしては、妖怪観の変遷、といったところだろう。時代ごとに、妖怪観を整理していくことが大きなポイント。さらに、分析手法としてアルケオロジー的方法というのが用いられているが、一見、難しく感じられようとも本文を読んで理解することがポイント。この2点のポイントを抑えることができれば、難しいものはないだろう。

問2

記述解答例
日常理解を超えた意味を持たない現象に意味を与え、日常理解で説明できる意味を持つ現象へと変換させる存在。

選択肢回答
人間の理解を超えた不思議な現象に意味を与え日常世界の中に導き入れる存在

 「民間伝承としての妖怪とは、そうした存在」とあるのだから、「民間伝承についての妖怪」は前文以前で言及されていることが分かる。

  • 意味を持つ=日常理解で説明できる現象
  • 意味を持たない=日常理解で説明できない現象

この2つのタイプの現象があることを認識することができれば、上記の記述解答例のような解答が自然と導出され、積極的に正答となる選択肢を選択できよう。

問3

記述解答例
物事の間にある思考や認識を可能にする知の枠組みを、通時的にその変容を観察することで、物事の秩序を認識する方法

選択肢回答:
物事の間にある秩序を認識し思考することを可能にしている知の枠組みをとらえ、その枠組みが時代とともに変容するさまを記述する方法

回答の大きな枠組みとしては「〇〇をすること(=具体的な方法)によって、××を達成する(=方法の目的)こと」というように、方法の具体的な内容・方法によってたっせいする目的、の2点を抑えて、項目として理解することがポイント。

  1. 知の枠組みを
    • 物事の間にある秩序を認識し思考することを可能にする
  2. 観察することによって
    • 通時的に
    • 時代とともに変容する様を
  3. 物事の秩序を認識する方法

回答(文章)の骨格となる部分と修飾する部分とを区別していくと分かりやすい。

問4

記述解答例
心霊からの一方的な意思疎通を媒介する存在から、人間同士の意思疎通を媒介する存在へと変貌し、娯楽の対象となったということ。

選択肢回答:2
妖怪が、心霊の働きを告げる記号から、人間が約束事のなかで作り出す記号になり、架空の存在として楽しむ印象になったということ。

「化」が変化を表していることに着目するし、ある状態(=変化する前の状態)から別の状態(=変化する後の状態)へ変化したということ、という形を押さえておくことがポイント。その上で、変化する前の状態・変化した後の状態の2項目を具体化していく。

問5 ❸

選択肢回答:2
「歯車」の僕は、自分に心当たりがない場所で僕が目撃されていたと知った。僕はドッペルゲンガーを見たわけではないのでひとまず安心しながらも、もう一人の自分に死が訪れるのではないかと考えていた。これは、「私」が自分自身を統御できない不安定な存在であることの例である。

断片的に情報の整合性を照合しながら回答する問題。少なくとも私は、この引用文から内容を理解することはできなかった。

本文の大きな枠組みとして以下の点を押さえる。

  • 仕合わせにも(+の感情)
  • 困惑した(ーの感情)
    • 帝劇の廊下で第二の僕を目撃
    • 銀座の煙草屋の前で第二の僕を目撃
  • 結果
    • 死は僕よりも第二の僕に来るかもしれない

第2問

 小説テーマの現代文。小説の特徴としては、事実と感情を明確に切り分けて読む必要があるということ、である。また、小説は作品全体で連続的であることから、基本的なあらすじは問題自体で説明がなされており、一方でこれも含めて問題が作成されることから、絶対に読んでおく必要がある。感情については、事実との因果関係に注目すること、をオススメしたい。何が原因で感情を表す行動に至ったか、を丁寧に読むことで正解に辿り着くことができる。

問2

選択肢回答:
妻に羽織をほめられたうれしさと、本当のことを告げていない後ろめたさとが入り混じった、落ち着かない気持ち。

「くすぐられる気持ち」を辞書的なレベルで理解していれば良いのだが、そうではない人もいるだろうから言及する。「軽く刺激を与えられることで、笑ってしまう(+の感情)」といった程度に解釈できるであろう。
その上で状況を整理する。

  • 妻がほめる(一部抜粋)
    • ほんとにいい羽織ですこと
    • 羽織だけ跳び離れて良いものを
    • 折角のいい羽織
  • 妻にW君から貰ったことを隠している
    • 今だに妻に打ち明けていないのであった。

このように、羽織について、妻が繰り返しほめている、妻に入手経緯を明かしていない、という2項目による状況が展開されていることが分かる。

問3

選択肢回答:
W君が尽くして贈ってくれた品物は、いずれも自分には到底釣り合わないほど立派なものに思え、自分を厚遇しようとするW君の熱意を過剰なものに感じてとまどっている。

問われている感情の因果関係を抑えることがポイント。該当箇所はL40ー44で、W君から送られた羽織と時計が高価過ぎたために、感謝を過剰に感じていることが読み取れる。また、表現としては、過剰=重苦しい圧迫、が対応するだろう。

問4

選択肢回答:
「私」に厚意をもって接してくれたW君が退社後に寝たきりで生活苦に陥っていることを考えると、見舞いに駆けつけなくてはいけないと思う一方で、「私」の転職後はW君と久しく疎遠になってしまい、その間看病を続けた妻君に自分の冷たさを責められるのではないかと悩んでいるから。

W君の見舞いに行かないといけないと思いつつも行けておらず、これについてW君の妻君の目が気になるという状況。
以下は、見舞いに行けなかった理由に関する該当部分。見舞いに行かないと思っている、W君の妻君が気になる、という点については難しくないだろう。

  • 羽織と時計がW君と私を遠ざけたようなもの
    • これがなければ、私はもっと素直な自由な気持ちになって、時々W君を訪れることができたであろう
    • 常にW君からの恩恵的債務を負うているように感ぜられ、この債務に対する自意識あW君の家の敷居を高く思わせた。

問5

選択肢回答:
偶然を装わなければW君と会えないとまで思っていたが、これまで事情を誤魔化してきたために、今更妻に本当のことを打ち明けることもできず、回りくどいやり方で様子を窺う機会を作ろうとしている。

問6

準備中

おわりに

 センター試験/共通テスト、というのは標準から容易あたりの難易度の試験として語られることが多いように思う。しかしながら、対策が必要ないということではない。今回扱った問題を例にあげれば、本文理解や回答選択に必要な情報は全て本文から抽出することがかのうである。さらに言えば、読む気があれば理解し難い表現も多くはないだろう。回答根拠だけを探そうとすれば、文章全体で様々に記述される「妖怪」を定義することは難しくなる。文章を読んで解く、という現代文科目における最も基本的な回答手続きができれば、高得点を望める試験である。

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