2023年度 共通テスト 本試験 「国語 現代文」 解説

 はじめに現代文の基本姿勢として2点のポイントを紹介しよう。
 一点目は、客観的に読む、ということである。これは、あなたの意見や主張は聞いていない、ということであり、同時に出発点でもある。文章を読んで次の問に答えよ、というような文言で始まる現代文科目においては、回答、その全ての根拠を本文中より抽出しなければいけない。また巷で聞く、現代文を実力ではなく運、とする主張は、筆者と回答者の間にある主張の距離によるものである。これが近ければ点数は上がり、遠ければ点数は下がる。そういう意味で、学習を放棄した者にとっては運によって点数の上下する対象として映るのかもしれない。
 二点目は、採点基準より逆算する、ということである。これは、採点基準に沿って回答する、ということである。試験というのは、解く(採点)するために作られているのだから、そこには必ず採点の基準が存在する。採点基準を意識した学習を積み・回答をすることで、得点を伸ばすことが可能である。また、この基本姿勢は、他の教科でも同様に当てはまるものである。例えば、数学においては回答指針を示すことによって同じ計算ミスでも得点が変わることがあったり、英語において文法知識の確認が不明と理由で「意訳」による減点・不正解、がこれにあたる。

目次

第1問

 評論テーマの現代文。評論文の特徴としては、基本的に筆者に何らかの主張があり、その主張を読者に伝えるために例示や比較などが用いられる。さらに、文章ならではの表現、独自の意味解釈、などが用いられることが多く、文章内で意味を推察しながら読み進めていくことが求められる。そのため、テーマ演習などが役に立たないとは言えないが、個別具体的な目の前の文章から離れた知識によって解答することで、自らを誤答へ導くことを心に留めておくことが重要である。

問2

選択肢回答:
病気で寝返りも満足に打てなかった子規にとって、ガラス障子を通して多様な景色を見ることが生を実感する契機となっていたということ。

解答を構成する要素は以下の通り

  • 室内にさまざまなものを置き、それをながめることが楽しみだった。
    • ガラス障子のむこうに見える庭の植物や空を見ることが慰めだった。
    • 視覚こそが子規自の自身の存在を確認する感覚だった。
  • 障子の紙をガラスに入れ替えることで、
    • (傍線部との因果関係)

 一点目からは、子規が自身の視覚についてどのように考えているかを読み取る。視覚こそが自身の存在を確認する感覚、とあるので、ガラス障子の向こうに見える庭などを見る行為は、視覚を機能させることで自身の存在を確認すること、と分かる。
 二点目からは、紙がガラスになると何が変わるのかを読み取る。これは、外が見えるか・見えないか、の違いである。つまり、環境として、視覚を発揮することのできない環境から視覚の発揮することのできる環境へと変化したのである。
 選択肢を確認すると、その中心となるテーマが「視覚」に相当するのは「3」だけである。また、ガラス障子を通して、とあるので、「視覚の発揮」と「ガラス障子の利用」の因果関係が成立する。

問3

選択肢回答:
ガラス障子は、室外に広がる風景の範囲を定めることで、外の世界を平面化されたイメージとして映し出す仕掛けだと考えられるから。

 解答を構成する要素は以下の通り

  • 「窓」は「フレーム」であり「スクリーン」でもある。
    • フレーム:窓は外界を二次元の平面と変える。
    • プロセニアム=スクリーン:窓の縁(エッジ)が、風景を切り取る
  • 外界をながめることのできる「窓」は、視覚装置として・・・
    • 「窓」=「ガラス障子」=「視覚装置」

 一点目は、三次元空間を二次元的に視覚処理するということ、である。つまり、目にしている三次元の風景が二次元(平面)へと置き換わることである。
 二点目は、視界に制限が与えられること、である。つまり、窓によって切り取られた一部が窓に映し出されるのである。
 選択肢を確認すると、この「フレーム」と「スクリーン」の内容が含まれるのは「2」だけである。なお、二次元=平面、風景を切り取る=制限・制御、などの言い換えはされているため、注意が必要ではある。

問4

選択肢回答:
ル・コルビュジエの窓は、換気よりも視覚を優先したものであり、視点が定まりにくい風景に限定を施すことでかえって広がりが認識されるようになる。

構成する要素は以下の通り

  • 窓は採光のためにあり、換気のためにあるのではない
    • 窓に換気ではなく「視界と採光」を優先した
  • 四方八方に蔓延する景色というのは圧倒的で、焦点をかき、長い間にはかえって退屈
    • もはや”私たち”は風景を”眺める”ことができない
      • 景色を望むには、むしろそれを限定しなければならない。
      • そこに水平線の広がりをもとめるの

 一点目は「喚起」よりも「視界と採光」優先する、という窓自体の方針が示されている。
 二点目は、景色をあえて限定することで視界が広がる、という窓の効果が示されている。
 これらの、方針・効果に合致するものは「5」となる。

問5

選択肢回答:
四周の大部分を壁で囲いながら開口部を設けることによって、固定された視点から風景を眺めることが可能になる。このように視界を制限する構造により、住宅は内部の人間が静かに思索をめぐらす空間になる。

構成する要素に関する部分は以下の通り

  • 四方八方に蔓延する景色というものは圧倒的で、焦点をかき、長い間にはかえって退屈なものになってしまう。
    • もはや”私たち”は風景を”眺める”ことができないではなないだろうか。
  • 景色を望むには、むしろそれを限定しなければならない。

 概ね該当箇所を抜き出すと、風景というのは限定することで眺めることができるようになる、という大きな枠組みでの主張を理解できる。対比構造を抑えることができると一層理解しやすい。
 これを主軸として、選択肢後半部分のどんな空間か、に答えていく。これは、文章Ⅱの二段落冒頭に「住宅は沈思黙考の場である」とあるので、これが該当する。

問6

 概ね要約問題である。文章内容を理解していれば容易に解けるが、傍線部の付近しか読まない・文章よりも選択肢の比較を重要視する、などテクニックに頼った解き方を採用していると、改めて文章を読み返す必要があり難易度が上がる。

( ⅰ )

選択肢回答:
【文章Ⅰ】の引用文は、周囲を囲う壁とそこに開けられた窓の効果についての内容だけど、【文章Ⅱ】の引用文では、壁に窓を設けることの意図が省略されて、視界を遮って壁で囲う効果が強調されている。

窓と壁の関係性に着目する。

( ⅱ )

選択肢回答:
ル・コルビュジエの設計が居住者と風景の関係を考慮した物であったことを理解しやすくするために、子規の日常においてガラス障子が果たした役割をまず示した

同一テーマであること、具体表現=理解しやすい・抽象表現=理解しにくい、と考えると、後半の理解しにくい抽象的な内容を理解するための予備知識としての役割を果たしている。

(ⅲ)

選択肢回答:
病で自由に動くことができずにいた子規は、書斎にガラス障子を取り入れることで動かぬ視点を獲得したと言える。そう考えると、子規の書斎もル・コルビュジエの言う沈思黙考の場として機能していた。

固定化された視点で外界を視る、という共通性に着目する。

第2問

 小説テーマの現代文。小説の特徴としては、事実と感情を明確に切り分けて読む必要があるということ、である。また、小説は作品全体で連続的であることから、基本的なあらすじは問題自体で説明がなされており、一方でこれも含めて問題が作成されることから、絶対に読んでおく必要がある。感情については、事実との因果関係に注目すること、をオススメしたい。何が原因で感情を表す行動に至ったか、を丁寧に読むことで正解に辿り着くことができる。

問1

選択肢回答:
都民が夢をもてるような都市構想なら広く受け入れられると自信をもって提出しただけに、構想の趣旨を会長から問いただされていたことに戸惑い、理解を得ようとしている。

該当の経緯に関する項目は以下の通り。

  • 「私」の意見・主張
    • 都民が胸をはって生きてゆけるような都市を作り上げる。
    • 道行く人々は皆立ちどまって、微笑みながら眺めて呉れるにちがいない。
  • 会長の反応
    • 悪評であるというより、てんで問題にされなかった。
  • 傍線部:私はあわてて説明した

「私」と「会長」とで広告に対する考え方の相違が存在し、この相違について「私」が説明を加えている状況である。そのため、基本的な回答の方向性としては、「私は◯◯と思っていたが、会長の同意を得られず、納得いただくために説明を加えている」、程度のものをイメージする。私の主張は概ね以下の通り。これを加味すると、選択肢「1」に絞られる。

問2

選択肢回答:
戦時中に情報局と提携していた会社が純粋な慈善事業を行うはずもないことに思い至らず、自分の理想や夢だけを詰め込んだ構想を誇りをもって提案した自分の愚かさにようやく気づき始めたから。

場面としては「問1」から続いており内容を踏まえる必要がある。話の流れを確認する。

  • 「私」が都民に夢を与える広告を「会長」に提案する。
  • 「会長」に方向性自体を否定され、営利に満ちたプラン例を提示される。
    • 明るい都市にには電燈が必要だ。ランプ企業を宣伝し金を受け取る。
  • 「私」と「会長」の方向性の違いに気づく。
    • 私費を投じた慈善事業である筈でなかった。
  • だんだん腹が立ってくる。(傍線部)
    • 自分の間抜けさ加減に腹を立てていたのであった。

このように考えると、迷うことなく選択肢「5」を選択できる。

問3

選択肢回答:
かろうじて立っている様子の老爺の懇願に応じることのできない「私」は、苦痛を感じながら耐えていたが、なおすがりつく老爺の必死の態度に接し、彼に向き合うことから逃れたい衝動に駆られていた。

ビルを出て帰路の途中のでの場面に関する問題。文章としては繋がっているが、内容としてはやや独立的である。

  • 老人(老爺)に食料を懇願される
    • 立っていることも精いっぱいであるらしかった。
  • 私は懇願を受けることができなかった
    • ぎりぎり計算して、私も一食ずつしか食べてない。
    • とても食料を分け与えることのできる状況ではない。
  • 老人(老爺)が再度食料を懇願する
    • 昨日からなにも食べていない
    • 上衣を抵当に入れても良い
    • まるで眼球が瞼の外に出ているような具合
  • むしろ「私」が食料を懇願したい
    • どんなに私の方が頭を下げて願いたかったことだろう
    • これ以上自分を苦しめて呉れるなと、老爺にむかって頭をさげていたかも知れない

問4

選択肢回答:
貧富の差が如実に現れる周囲の人々の姿から自らの貧しく惨めな姿も浮かび、食物への思いにとらわれていることを自覚した「私」は、農作物を盗むような生活の先にある自身の将来に思い至った。

内容としては問3の場面と結びつく問題。

  • 私をとりまくさまざまな構図
    • 富裕層
      • 毎日白い御飯を腹いっぱいに詰め、鶏にまで白米をやるあるじ
      • 高価な莨をひっきりなしに吸っている血色のいい会長
    • 貧困層
      • 鼠のような庶務課長
      • 膝頭が蒼白く飛出た佐藤
      • 長山アキ子の腐った芋の弁当
  • 朝起きたときから食物のことばかり妄想
    • こそ泥のように芋や柿かすめている私自身の姿がそこにあった
    • こんな日常の連続に一体どのようなおそろしい結末がまっているのか。
      • =それを考えるだけで身ぶるいした。

問5

選択肢回答:
満足に食べていくため不本意な業務も受け入れていたが、あまりにも薄給であることに承服できず、将来的な待遇改善や今までの評価が問題ではなく、現在の飢えを解消できないことが決め手となって退職することを淡々と伝えた。

どの選択肢の冒頭部分も傍線部の近くには存在しないので、一つ目の読点の後ろより検討する。もちろん、文章全体からかいとうするのであれば、この部分を検討してもよい。

  • 私の給料が薄給であることに気づく
  • 此処を辞める決心をかためる

問6

選択肢回答:
人並みの暮らしができる給料を期待していたが、その願いが断たれたことで現在の会社勤めを辞める決意をし、将来の生活に懸念はあるものの新たな生き方を模索しようとする気力が湧き起こっている。

  • 会社を辞める決心をする
  • 私の期待していこと(決心の理由)

問7

( ⅰ )

選択肢回答:3
それは、戦時下に存在した事物が、終戦に伴い社会が変化する中においても生き延びているということだ。

以下の関係性に注目する。

  • (この広告)=(焼けビル)=(会長の仕事のやり方)
    • この広告と「飢えの季節」本文の最後にある「焼けビル」との共通点
    • (この広告と)本文の会長の仕事のやり方との共通点

これらの共通点は、戦前が戦後でも継続されている項目、であること。

( ⅱ )

選択肢回答:2
「私」にとって解消すべき飢えが継続していることの象徴

「私」と「焼きビル」との関係性に着目する。

  • 私と焼きビル
    • 安月給による飢え
    • 飢えから逃れるため退職(転職?)
  • かなしくそそり立っていた
    • ネガティブ
    • 継続

上記のように考えると、「飢え」と「継続」が回答の基準となり、迷わず選択肢を選ぶことができる。

おわりに

 問題全体を通して、問題の回答根拠が明確に分かる表現で傍線部付近にあり、現代文を意識的に学習してきた受験生にとっては簡単に感じられたかもしれない。問われている内容から、回答に必要な要素を抽出し、選択肢に含まれているかを確認する。この解答手順を正確に丁寧に行うことが重要である。

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